フルブライト奨学金に合格し、2021年秋から留学をします。
奨学金をもらうことって難しそう
奨学金をもらう人って、すごい実績がある人だろうな
と、私も思っていました。
✓結論「誰でもチャンスはある」
どうしてフルブライト奨学金に合格することができたのか。
先日、以下のツイートをしました。
私がフルブライト奨学金に合格することができたのは、
・自分の思いを言語化できた
・実現のために継続的に活動できた
からだと思う。
本心ではやりたくないと思っている見栄えのよい課外活動をやることより、自分がどういう人間なのか、何をしてきたのかを、堂々と語ることの方が何倍も大事。— 田原佑介@コロンビア教育大学院 (@TaharaYusuke) April 19, 2021
私は、公立高校の教員です。
留学経験はありません。
英語力も高くありません。
国際的な活動をしたこともありません。
それでも、合格することができました。
フルブライト奨学金に受かるためにどんなことが必要なのか、まとめました。
【フルブライト奨学金】合格のための3つのステップ
0.概要
(1)フルブライト奨学金とは
フルブライト奨学金制度は、
・アメリカの若者が外国で学ぶ援助をすること
の二つがメインです。
つまり、日本人である私たちが、「アメリカ」へ留学することを支援してくれる制度です。
欧州やアジアへの留学は、対象ではありません。
給付内容は、以下の通りです。
最大700万円の奨学金を受けることができます。
✓金銭面以外のメリット
金額以外にも、フルブライト奨学生(フルブライター)になるメリットはたくさんあります。
フルブライト奨学生として選ばれれば、大学のアドミッションオフィスから、「この人は、フルブライターとして認められている人だ」と見てもらえます。
事実、私が出願した大学の中には、出願の際「Fulbrighter」かどうかを入力する項目がありました。
コロンビア教育大学院は、出願料を免除してくれるなど、フルブライターであることに価値を置いてくれているようでした。
日本人だけでも7500名のフルブライターがいます。
世界中にも、フルブライターが各分野にいます。
フルブライターになれば、こういった方々と、つながりをもつことができます。
✓フルブライトに応募する際の注意点
プログラムの終了後、自国に2年間住まなければいけない、という縛りがあります。
「卒業後すぐにアメリカで就職したい」人には、向いていませんので、気を付けてください。
(2)出願の流れ
以下の流れで、約20名を採用。
6月〜7月:予備審査
②7月31日まで申請書類一式の提出
9月〜10月:書類審査
③10月〜11月:面接審査
④12月:選考結果の通知
詳しくは、日米教育委員会のHPを確認してください。
(3)提出書類
提出に必要な書類は、以下の6つです。
②履歴書(和文、英文)
③英文成績(在籍)・卒業証明書
④英文推薦状3通
⑤TOEFL/IELTSスコアレポート 80点以上
1.合格のためのステップ
フルブライトへの合格に必要なことは、次のとおり。
(2) 実際に動いてみる
(3) 人に伝えてみる
めちゃくちゃシンプルです。
奨学金への応募において、最も大事なのは「願書(エッセー)」です。
「今の日本や世界で、私が解決したい課題はこれ!そのために、こういう活動やってきた!成果もある!
でも、壁にぶつかった・・・。
だから海外進学して、もっと学ぶ。だから、奨学金が必要なんです!」
という内容を、エッセーに書いていきます。
私が実際にエッセーに書いたのは、どこにもない素晴らしい成果とかではなく、誰にでも実行できる活動です。
それでもなぜ合格できたかというと、「本当に自分がやりたいことはこれだ!」と言えるまで、丁寧に言語化できたからだと思っています。
では、具体的に見ていきましょう。
(1) 自分の思いを言語化する
言語化とは、自分の価値観や感情、課題意識を、相手に伝わるように形で言葉にすることです。
就活なんかで言われる「自己分析」が近いのかと。
「これやりたいなー」「こういう世界になったらいいなぁ」とぼんやり思っていることの裏側には、自分にしかない経験や感情があります。
それらを書きだしたり、整理したりしていきます。
私は、HeroMakers(経産省「未来の教室」実証事業)を通して、自分の思いを言語化していきました。
具体的なステップは、次のとおり。
STEP2 その中から1番強い「想い」を選ぶ
STEP3 それがなぜ強い想いになっているのか深堀りする
STEP4 上記の結果を踏まえて問題意識を言語化する
(#2 世界を変えたいなら己を知れ!【Hero Makers講座】より)
私のLove&Hateは、こんな感じ。
【Love】
・高校生の変わろうとするエネルギー
・チャレンジ精神
・教員の生徒への愛情
【Hate】
・高校生が多様な進路に進めないこと
・海外に比べて、高校生は自信や主体性、創造性が低いこと
・学校がただ知識を教える場にしかなってないことと、教員がテストと成績でしか指導できないこと
さらに、過去の自分の経験を思い返してみたり、調査結果を調べてみたりします。
たとえば、日本財団の「18歳意識調査」によると、「自分で国や社会を変えられると思う」と思う日本の若者の割合は18.3%。
海外に比べて、異常に低いです。
また、Abobeの「Gen Z in the Classroom: Creating the Future(教室でのZ世代*1:未来を作る)」によると、自分のことを「創造的」と回答した日本の若者は8%しかいません。
教師も、若者のことを「創造的だ」と考えていません。
こうやって、LoveとHateをリストアップして、その背景にある課題について調べていきます。
すると「この課題は、自分が解決しないとだめだ!」と思うようになります。
そして、課題を一つ選び、深堀りしていきます。
たとえば、「高校生は主体性がない」を選んだとします。
それを以下のように、深堀りします。
→生徒は、人(ロールモデルや一緒に解決する仲間)とのつながりがない
→生徒は、課題を解決しようと、周りに本気で思いをぶつけたことがない
→生徒は、自信がない。意見がない
→だから、生徒は主体性がない。
課題の深堀りをすると、ぼんやりとしか見えていなかった「主体性」の問題が、ぐっと鮮明に見えてきます。
高校生は、テストや成績にばかり追われています。
学校には、「自分って何をしたいのか」と考える機会も、「かっこいい!」と思える大人との出会いも、「これやってみたい!」という思いを本気でぶつけられる場もありません。
調査結果をみたり、課題を深堀りしたりすると、「主体性低すぎ!これはまずい!」とか「教員が生徒のことを創造的だ、って思わないと、生徒が創造的になるわけない。これはなんとかしないと!」って思うじゃないですか。
このようにして、自分がどんなときに喜びや怒りを感じるのか、課題の裏にはどんな原因があるのか、自分はどうやってその課題にアプローチしていくか、などを整理していきます。
(2) 実際に動いてみる
高校生に主体性を身につけさせるには、「高校生が大人に本音をぶつけ、実際に社会が変わった経験が必要だ」と気づきます。
実現するためのプロジェクトに取り組みます。
学校の中でやれないか、地域でやれないか、協力してくれる人はいないかなどを考えます。
そのために、企画書を作ってみたり、CMのための動画を作ってみたり、プレゼン用のスライドを作ってみたり、課題を可視化してみたりしました。
私は、学校、議員、企業、教育委員会、地元の社長さんなど、様々なところに話をしに行きました。
本当に多くの人から、アドバイスをいただきました。
そして、「生徒が学校改革に取り組めば、主体性が身につくのではないか」という仮説にたどり着きました。
一番身近な社会は学校であり、変わったかどうかが実感しやすいからです。
そのころ、私が勤める学校では、教育課程を新しくしているところでした。
教員がいくつかのチームに分かれて、教育課程のアイデアをプレゼンする、という研修をしていました。
生徒も、そこでプレゼンする機会をもらえました。
最終的には、全校生徒、教員に向かって、学校をよくするアイデアを提案することができました。
このように、解決したい課題を見つけたら、実際に解決に向けて動いてみます。
(3) 人に伝えてみる
(1)(2)のプロセスを一人でやっても、なかなか上手く進みません。
自分の思いを言語化するのは大変ですし、時間もかかります。
作業としては、めちゃくちゃ地道です。つらいです。
だから、人に伝えて、フィードバックをもらいながら、すすめます。
さらに、以下のような突っ込みをいれながら、自分の違和感の正体を言葉にしていきます。
・どうやったら人に動いてもらえるか
・共鳴してくれる仲間はだれか
・大目的と手段は合っているか
・ステークホルダーはどういう関係になっているか
私がフルブライト奨学金の応募のためにエッセーに書いた内容は、「今の日本や世界で、私は、高校生の主体性の低さを解決したい!そのために、生徒と学校改革をするプロジェクトに取り組んだ。でも、学校は全然変わらなかった。だから、海外進学して、もっとリーダーシップを学ぶ。だから、奨学金が必要なんです!」という内容です。
活動は、教員であれば誰でも取り組める内容です。
国際的な舞台で発表したわけではありませんし、賞を受賞したわけでもありません。
それでも、フルブライト奨学金に合格することができたのは、
・実現のために、継続的に活動することができた
からだと考えています。
これだけで、ユニークで、その人にしか書けないエッセーを書けます。
✓「奨学金に受かるための」活動はNG
時々「奨学金に受かるために、どんな活動をすればいいのですか?」「この活動をやっていれば、奨学金もらえますか?」と聞かれることがあります。
おそらくそのやり方ではだめで、活動の優劣や規模で決められているのではないと思っています。(もちろん受賞歴や、活動の成果があれば、よりよいことは間違いありません。)
それよりも、「あなたは何をしたいのか?」にきちんと答えることを求められています。
本心ではやりたいと思っていない見栄えのよい活動よりも、「自分自身がどういう人間なのか」「何をしたいのか」を堂々と語ることの方が何倍も大事です。
私は、誰よりも教育の課題について考えた自信があるし、解決のために全力で活動しました。
学校は変えられませんでしたが、生徒と学びについて本気で考えたり、そのプロセスで彼らが成長していく姿を見たりするのは、何より楽しかったです。
「私が解決したい課題はこれだ!」と発見できれば、誰でもフルブライト奨学金に合格する可能性があります。
自分のやりたいことを言葉にするには、「正しいやり方」と「活動を続ける場」が必要です。
言語化のために使えるYoutube動画は以下のとおり。
動画にあるステップをやれば、自分のやりたいことや課題意識を言葉にできます。
教育関係者だけでなく、海外進学に行きたい人は、必見です。
・#2 世界を変えたいなら己を知れ!【Hero Makers講座】
・#3 問題を魔王ひとりのせいにできたら誰も苦労しない件【Hero Makers講座】
・#4【Hero Makers講座】超簡単!肩書じゃない自己紹介 | 海外大学のエッセイ/志望動機書/SOPを書くのにも使えるぞ!
あとは、「活動を続ける場」として、私はHeroMakersに参加しました。
これは、教育をよくしたい人のためのプラットフォームです。
そこで仲間と出会ったり、成果を報告したりしました。
そういう人たちの集まりはたくさんあるので、探してみてください。
私は「海外進学して、これがやりたい」と人に伝えた時、「何を変なことを言ってるの?」などと言われたことが何度もあり、悔しい思いをしました。
おそらく、海外進学をしようとする人は、誰でも経験するつらさです。
思いが伝わったときは嬉しいし、伝わると仲間が増えます。
世の中にいるリーダや、素晴らしいサービスを作った人は、「なんでわかってくれないんだ!」というストレスから逃げなかったんだと思います。
何度も何度も、伝え方の工夫をしながら、周りにその熱を伝えてきたから、成功したはずです。
だから、伝わらないからといって、あきらめないでください。
応援しています。
2.実際のスケジュール
✓5/31 オンライン登録
5月から準備をスタート。
簡潔な研究計画書を出すことになります。このタイミングで初めて、エッセーを書きました。
内容は、
②”Justification for the proposal-1”(なぜその分野か)
③”Justification for the proposal-2”(なぜこの段階で、アメリカで勉強、研究する必要があるのか)
の三つを英語で書きます。
何を書けばよいか分からなかったので、アウトラインを作って、日本人の友人にコメントをもらいました。
加えて、過去のフルブライターの方にコンタクトをとりました。
フルブライトのHPに名簿があるので、SNSやブログを通じてつながり、アドバイスを受けました。
ある方は、アメリカにいるにも関わらずZoomで直接話をしてくださる方もいて、感動しました。
エッセーを修正して、なんとか完成。
オンラインで入力をしていると、エッセーが提出できずに、焦りました。
理由は、分量を間違えていたからでした。
求められている分量は、①は2000 characters、②③は1000 characters。
私は、”2000 words”、”1000 words”で書いてしまっていたのです。
締め切り当日に削りまくって、なんとか提出できました。
当時のTOEFLのスコアは88。6/12、審査結果がメールで届きました。
✓7/31 提出
①願書
エッセー(日・英)、研究計画書(英)、それぞれA4で1枚ずつ書きます。
大学院出願(1月)よりかなり早い段階ですが、フルブライトに出願するために作ったエッセーが、大学院へ提出するエッセーの土台になりました。
エッセーのテーマは、” describing how you have achieved your current goals”(どのようにゴールを達成してきたか)です。
これまでに活動してきたことを中心に三つのゴールを書きました。
研究計画書と合わせて、友人、ネイティブの知人からコメントをもらいました。
ここで始めたのが、カウンセラーのTomからの添削です。
エッセーの書き方を知らない私に、一つひとつ指導してくれました。
” This intro is a bit abstract.” “What’s the point?” “I don’t really understand the point of this paragraph.” “Your goals are very vague.” など、真っ赤のコメントぎっしりです。
”more specific”と何度言われたか分かりません。
Tomからの質問に答えていくと、「これだと伝わらないんだな」とか「こういう言い方をすればいいのか」と分かるので、どんどん自分の頭の中が言語化されていきました。
Tomから2回の添削を受けて、無事提出できました。
(↓初めて、Tomに添削をしてもらったときは、こんな感じです)
②履歴書
大学院に提出したものと比べて、この時に提出した履歴書は、スカスカのものでした。
③英文推薦書
職場の上司、大学の指導教官、留学の先輩として寧々さんの三人にお願いしました。
大学院出願でも、ものすごく重要な推薦書。
本来であれば直接お願いに行くべきところでしたが、コロナ禍ということで、大学の教授にはメールでお願いしました。
お三方とも快諾してくださり、本当に助かりました。
④当時のTOEFLのスコアは95。
「この人は、大学に受かる可能性があるな」と思ってもらうためにも、本当は、ここで大学の合格ラインのスコアが出せるともっと良いみたいです。
JASSOの奨学金出願でも、TOEFLのスコアが100必要なので、7月末でTOEFL100とれていると、余裕をもって出願が進められます。
✓10月~11月 面接
10/15にフルブライトからメールが来て、書類審査を通ったこと、11/2に面接を行うことを知らされます。
2週間と少しで面接なので、この期間はあっという間でした。
例年は、東京の日米教育委員会で面接を行うそうですが、今回はZoomでの実施でした。
①面接準備
ネットで検索すると、フルブライトの面接について書いてくださっている方がいたので、参考にアウトラインを作成。
フルブライターの方にアドバイスももらいました。
「研究分野」「解決される課題」「キャリアプラン」「これまでの活動の成果」「アメリカ留学の必要性」などの項目について、1分程度で説明できるようにしました。
②面接当日
時間は15分程度。外国人3人、日本人1人の面接官から、順に質問を受けました。
内容は、「どんなリーダーシップ?」「校長じゃないの?」「もしすごく影響力のある人に会ったら、あなたならどうする?」「留学って、あなたにどんな影響がある?」「equityについて、どう思う?」「留学に行かなくても、記事とか本とかあると思うけど、それ読んだ?」などを聞かれました。
面接は笑いもあり、明るい雰囲気で、あっという間に終わりました。
” equity” についての質問は困りましたが、「それは教育で大事な問題ですよね…」と何とか乗り切りました。
あとの質問は、想定していた答えから応用して答えることができました。4月からエッセーを書いてきた経験が活きました。
✓結果通知
例年は、12月上旬に文書での結果通知が来るはずでしたが、なかなか来ず、心配しました。
「ひょっとして、合格した人だけに通知がいくのでは」とも思いましたが、コロナの影響で通知が送れるとのメールが来ました。
そして、12月16日。妻からのLINEで封筒が届いていたことを知りました。
その日は急いで帰り、レターパックを開けると、“principal candidate for a 2021 Fulbright grant for graduate study”との文字を見て、びっくり!
なんとか、面接試験を突破できました。
これまで「留学に行きたいけど、フルブライトがだめだったらどうしよう」とか、漠然と不安がありました。
TOEFLのスコアも思ったように伸びず、そもそもコロナで渡航できるのかとも心配になっている時期でした。
合格をもらったことで、「行けるのかも」と希望を持てました。
MBA留学について興味がある人は、ゆうたろうさんの記事「MBA留学の準備費用と留学中の費用を社費・私費別に紹介!」をご覧ください。
MBA留学と言えば、「とにかく高い!」ですが、大体どれくらいかかるのか、どうやって費用をクリアするかがまとめられています。
※奨学金以外の留学に関する記事は、【費用を抑えたい人】海外大学院留学の進め方【エージェント頼り×】をご覧ください。
コメント
[…] ブライト奨学金の詳細については、田原さんの書かれている記事『【フルブライト奨学金】合格のための3つのステップ』が非常に有益です。応募するまでのステップ、必要書類や重要 […]
ブログ大変勉強になりました。私は今年応募しており、不安な中で、手探りのまま進んでいましたが、実際に大学院留学を決めることができた方の言葉に勇気をいただきました。本当に有り難うございました。
私は、英語の能力もまだまだですが、0と1は大きく違う、挑戦することは自分への挑戦だとも思いました。これからも、諦めず、前に進んで行けたらと思います。
有り難うございました。
吉永さん
情報がない中で、一人で準備するのは大変だったと思いますが、応募おつかれさまでした!
新たなことへの挑戦は、苦労も多いですが、諦めなければ何かしらの形に結びつきます。
これからの進学準備で困ったことあれば、いつでもご連絡ください。
応援しております!!