孤独なバカを見つけたら、立ち上がって参加する最初の人間となる勇気

コロンビア教育大学院

田原です。

コロンビア教育大学院の有志と立ち上げた学生団体JCEL(Japan⇔Columbia Education Loop)。立ち上げの経緯第1回の様子第2回の様子については、記事を読んでいただきたい。

孤独なバカを見つけたら、立ち上がって参加する最初の人間となる勇気

私は「JCELが、日本の教育を一歩動かすきっかけになれるんじゃないか!」と勝手にワクワクしている。

以下、背景を詳細に書く。
(この記事は、JCELの運営メンバーの総意ではなく、私個人の意見にすぎない。)

1.どうしたら教育は変わる?

昨年度、センター試験が共通テストになるなど、入試改革が行われた。
GIGAスクール構想によって、一人一台端末が実現した。

こういったポジティブなたくさん変化はある。
しかし、現場にいた立場としては、もっとスピーディーに変えていかなければいけないという危機感もある。

課題の一つは、教員のなり手不足。
文科省によると、2020年度の公立小学校の採用倍率は、全国平均で2.7倍。

過去最低を記録している。
倍率が下がれば、質は下がる。

離職、休職の増加にもつながる。
人手は常にギリギリで、休暇がとりづらく、労働環境の悪化にもつながる。

当然、政策レベルでも、自治体単位でも、改善しようという努力はたくさん見られる。
ただ、もっとスピード感をもって変えていかなければいけないと感じている。

どうしたら、日本の教育は変わるか?
「このままじゃだめだ!」と声を上げる人が増える必要がある。

いまの日本は、教育への関心が低すぎる。
日本にいる人が、教育を真剣に考え、もっと関心をもたなければいけない。

どうしたら、関心を持つ人が増えるか?

一つは、システムが崩壊した時だ。
一人の教員が多くの生徒を教えるという仕組みで、いまは質を保てている。

しかし、教員の質低下、教員不足がつづけば、現在の公教育の仕組みが成り立たなくなるのではないかと思っている。
学校で起こる問題が多発し、学校への信頼が失われる。

ここまでくれば、変わるしかない。
しかし、この状況になるまで待っているわけにはいかない。

教員不足以外にも、課題は山ほどある。

もっとポジティブな方法で、教育の問題を認知し、共感し、賛同してもらい、教育がよくなってほしい。
どうすればいい?

ヒントは、このTEDのスピーチ動画「How to start a movement」にある。
この動画には、一人のリーダーが踊り、そこに一人二人と加わり、最後には大きな動きが生まれる様子が収められている。

スピーカーのデレク・シヴァーズさんは、本当に運動を起こそうとするなら、次のことが必要だと述べている。

「ついて行く勇気をもち、他の人たちにもその方法を示すこと。すごいことをしている孤独なバカを見つけたら、立ち上がって参加する最初の人間となる勇気を持ってください。ここTEDはそのための最高の場所」

日本では、たくさんの教育関係者が、少しでも教育をよくしようと努力をしている。
世界にも負けないくらいすごい実践をしている先生もいる。

リーダーは、いる。
しかし、そのリーダーが孤立している。

二人目、三人目とついていく人がいないのだ。
だから国全体として「教育、なんとかしないと!」という空気がうまれにくい。
一瞬は火がついても、すぐに消えてしまう。

社会課題の解決に対して、コラボレーションが必要なのは言うまでもない。

大規模な社会変化をもたらすのは、個々の組織による「個別介入」よりも、セクターを横断する優れた連携である。
これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。(スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー ベストセレクション10)

こういう連携を、「コレクティブ・インパクト」と言うそうだ。
多様な人が、共通のアジェンダの解決に協働して取り組むことで、社会にインパクトを与えることができる。

大学院には、各分野を学ぶ学生がいる。
彼らと、教育の課題解決に取り組めたら、新たなアプローチが生み出せるのではないか、と思った。

リーダーがいて、ついていく仲間がいて、大きな動きが生まれる。
そういう仲間さがしをするために、大学院は最高の場所だ。

だから、JCELの立ち上げに関わることを決めた。

2.経産省「未来の教室」での失敗と、もう一歩

ここからは、実際に私がやったことについて書きたい。

私は2018年、2019年と、経産省「未来の教室」実証事業に参加をしてきた。
10年後、20年後の教室はどんな様子なのか、そのために今できることを実現するためにやれることを議論した。

そこで得た学校改革のアイデアを学校で実践した。
成果は確かにあった。

しかし、無力感の方が大きかった。
いくら議論を重ね、人にアイデアを伝えても、一人の公立の教員でできることには限界があった。

教育への関心を高め、一緒によくするために活動をする仲間が必要だと感じた。

仲間づくりの大事さを実感するできごとが、もう一つある。
私の留学に対し、奨学金のサポートをしてくださっている神山財団という財団がある。

渡米前に、オリエンテーションがあった。
私は、上記の学校改革の取り組みについてプレゼンを行った。

そこで、

「タイミングを待ちなさい。仲間を作って、継続して動き続けるといい」

というアドバイスをいただいた。

このアドバイスはものすごく心に残っている。
留学に行くのは「教育をよくするための仲間をつくるためだ」と思っていた。

そして、渡米後、Gakkatsu!という教育を学ぶ大学院生のための勉強会を始めた。

具体的には、以下の二つの活動をしている。

(1)JCEL

コロンビア教育大学院の有志と学生団体JCELを立ち上げた。
キックオフイベントには、教育、公共政策、ビジネス、エンジニアなど多様な分野の学生が参加。
お互いの知見を教育の課題解決にフル活用して、日本に解決策を提案するという会だ。

(2)海外で教育を学ぶ大学院生の勉強会

大学の枠を超えた教育を学ぶ大学院生のコミュニティ。
Columbia, MIT, Harvard, UoPなど、多くの大学から学生が参加した。

なにせ、一年間で1000万円かかる費用をやりくりして、海外の大学院に教育を学びに来てるような人たち。
卒業すれば、それぞれの分野でリーダーになるにちがいない。

海外にはもっと多くの教育を学ぶ学生がいる。
彼らとつながり、5年か10年して、日本で教育のために一緒にやろうというタイミングがくれば、大きな動きがつくれるのではないかと考えた。

この動きは海外大生だけでつくれるものではない。
日本でいま、奮闘している現場の先生方、企業の方々、自治体、省庁など、多くの方との協働によってできるものだ。

さきほどのTEDの動画のように、一人ひとりの動きがつながり、数年後に大きな動きになるはずだ。
JCELの立ち上げでは、石川泰さんに誘ってもらい、私は参画しようと決めた。

この記事を読んでいるあなたも、一緒に仲間になって動いてくれたら、これほど嬉しいことはない。
今後、多くの教育関係者とネットワークを築き、大学院の最新の知見を活用しながら、日本の教育を少しでも前に進めていきたい。

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