こんにちは、田原です。
コロンビア教育大学院(以下、TC)への進学が決まってから、
「何のために留学するの?」
と質問を受けました。
現時点での考えをまとめます。
留学の目的は、
・つながり(ネットワーク)
・肩書き(修士号)
です。
TCでの授業の柱は、
「リーダーシップ(学校づくり)」「統計やデータを使った分析」「実習」
の三つ。
とる授業はこんな感じです。
履修する授業が決まった!
(必修)
・Instructional Leadership of Independent Schools
・Privatization and Choice in Education
・Ethics and Education
・Introduction to Research Methods in Education
(選択)
・Education equity
・Basic Concepts in Statistics
ワクワク!#秋からコロンビア— 田原佑介@コロンビア教育大学院 (@TaharaYusuke) May 4, 2021
政策のつくり方や組織の動かし方も学ぶし、いろんな学校のあり方についてディスカッションもする。
学校の取り組みの良し悪しを、科学的に判断できるようになるための方法も学ぶ。
実習では2カ月ニューヨークの学校に通って、校長とチームを組んで、その学校の課題解決をする。
また、ネットワークも、留学における大事な要素の一つです。
私が教員になると決めたときは、教員以外の職を知らなかったし、理想の教育もありませんでした。
HeroMakersで、いろんな大人が、それぞれのアプローチで、教育に携わっていることを知りました。
たとえば、経産省「未来の教室」を受託されたのは「BCG(ボストンコンサルティンググループ)」というコンサルタントでした。
結果、学校や業種を超えたコラボが生まれ、日本中で新たな教育の形がどんどん生み出されています。
一人の教員では到底作り出せないようなインパクトでした。
彼らの仕事をみて、かっこいい!と思いました。
TCで、世界中の教育者に出会って、ニューヨークの学校見ることで、ネットワークができます。
様々なアプローチを知り、自分なりの方法を見つけます。
最後に、修士号。
HeroMakersで理想の教育を実現しようと、教育委員会などいろんなところに話に行きました。
が、全くうまくいきません。
一人の公立高校の教員ができることの限界を感じました。
「未来の教室」で見たようなインパクトの大きな仕事をするには、海外大で修士をとることが一番の近道だと知りました。
他人が判断するのは、肩書きです。
どんなに情熱をもっていようと、正しいことを言っていようと関係ありません。
肩書きがあるから、初めて聞いてもらえます。
「学び・つながり・肩書き」が、海外進学の目的です。
以下は、これまでに留学経験なし、公立高校の教員の私が、
TCへの進学をしようと決意した、いきさつについて書いておきます。
1.高校時代
元々、人前に出るのが苦手です。説明も下手くそです。
それなのに、なぜ教師になったのかというと、
きっかけは、私の小さな頃の経験にあります。
私は四人兄弟の三番目です。
真ん中の子って、ものすごく自由奔放か、ものすごく周りの目を気にする子か、どっちかです。
私は後者で、周りが喜ぶことをしたい子でした。
私は、スポーツができるわけではないし、長く続いた習い事もありません。
周りに自慢できるようなことがない中、私にとって勉強だけは唯一、「努力すれば確実に成果が出るもの」でした。
共働きで忙しい母でしたが、私が勉強を頑張ったときは、ものすっごく褒めてくれました。
「勉強って楽しい」「先生になりたい」と、小さい頃に思い始めました。
高校では、授業をしてくれる先生を見ながら、「いい先生ってこんな先生」ノートをつけていました。
厳しいのに生徒から好かれてる先生はどうしてなんだ、と分析していました。
✓学校に抱いた疑問
そこから、教育に対して疑問を抱くことがいくつかありました。
一つ目は、高校の時の彼女が学校をやめたことです。
私から見て、彼女のために学校が何かフォローしてくれている様子は全くありませんでした。
その頃から「学校ってなんのためにあるんだろう」と思うようになりました。
二つ目は、推薦入試の受験です。
千葉大学の公募推薦を受けようと思い、英語の先生に相談しました。
その先生に「えっ?」という反応をされました。
たぶん「なんで、あなたが受けるの?」という意味です。
「教員って全員が生徒の応援をしてくれる存在じゃないんだ」と気づきました。
三つ目は、私のセンター試験の失敗です。
国語が100点しか取れませんでした。
我が家の方針は、国公立大学以外の進学NGです。
さらに、弟はこれから受験で、兄は理系の大学院にいました。よって浪人もNG。
母からは「A判定以外受けないで」という話でした。
センター試験の結果、これまで模試の判定で書いたことのない大学が受験校の候補になりました。
冷蔵庫の前で大喧嘩し、A判定よりのB判定が出ていた埼玉大学を受験することになりました。
千葉大や埼玉大を受験したのは、ただ単に関東への憧れです。
父が「関東は本物に会える」と教えてくれました。
高校生の受験で、教育は若者の人生に大きく関わっていることと、必ずしもよい先生ばかりではないことを学びました。
「自分が教育をよくしたい。自分のように失敗する人を減らしたい」と思うようになりました。
2.大学時代
教育に思いを持ってはいましたが、大学1、2年はサークルもバイトもせず、だらだらと過ごしました。
転機があったのは、大学3年のゼミです。
牛江一裕先生が担当の言語学ゼミに入りました。
テーマを調べて、まとめて、レポートにという流れです。
10冊20冊読めば、だいたいその分野のことは知ることができると分かりました。
その時初めて、本や論文を読むことが楽しいと知りました。
学問の基礎を教えてもらいました。
もう一つの転機は、TOEICです。
「TOEIC850点とれば教員採用試験の一次試験が免除」という不純な動機で勉強を始めました。
初めて独学で、工夫をしながら英語を勉強しました。
600点→830点→945点とスコアをあげることができました。
親や周りの人が褒めてくれて、ここでまた「勉強は楽しい」と再認識。
最後の転機は、卒業旅行のアメリカです。
鈴木君と一緒にロサンゼルスに行きました。
一番のイベントは、UCLAに行ったことです。
「ここで学びたい!!!!」と強烈に思いました。
そのあと留学する勇気も行動力もなく、教員になりました。
3.教員
私は、2年目で初めて担任を持ちました。
その年、私は生徒と関係づくりが上手くいきませんでした。
ピシっと強く言えないし、指導をしようと声を掛けたら「担任に話なんてねえ!」と生徒に言われたこともあります。
初めて主担当になった部活は、一勝もできずに一年が終わりました。
校長室で「もっとこうした方がいい」と言われ、納得できないものの言い返せずに大泣きしたこともあります。
指導力がないのはもちろんですが、何より授業が下手でした。
なんとかせねばと思い、長谷川博之先生の勉強会に行きました。
授業や学級経営について学びました。
学級は安定して、生徒とよい関係を作れるようになりました。
それから長谷川先生のNPOに参加し、セミナーのお手伝いをするなど6年間ほど活動してきました。
私は、長谷川先生が日本で一番授業が上手いと思っています。
NPOに所属する先生方も、授業がめちゃくちゃ上手です。
一方、私は授業が下手でした。授業が上手い先生に憧れるとともに、「私には、あのようにはなれないな」とショックでした。
私は、教育者として、どこで勝負できるんだろうと悔しく思っていました。
二校目に異動したとき、最大の転機がありました。
HeroMakersへの参加です。
「教員こそ日本を牽引するグローバルリーダーに」というメッセージに納得。
このチラシが留学へのきっかけです。
参加すると、衝撃が多すぎました。
✓衝撃1「教育は先生以外でもできる!」
白川寧々さん(元TAKTOPIA創業者)をはじめ、瀬戸昌宣さん(SOMA代表)、浅野大介さん(経済産業省)、後藤健夫さん(教育ジャーナリスト)、松永正樹さん(九州大学准教授)など、学校の教員以外で、教育に携わっている人との出会いは初めてでした。
教員との接点しかない私にとっては本当に驚きでした。
教員以外に、「教育」に対するアプローチがこれほどあることを実感したからです。
✓衝撃2「アントレすげー!」
FutureHackというアントレプレナーシッププログラムを受けた10代の子どもたちと、ディスカッションすることがありました。
堂々と自分の意見を発する彼らの姿は、日本の学生像とは全く異なるものでした。
魔法みたいでした。
授業の下手さに劣等感を抱いていた私は、「こういう教育やってみたい」と思いました。
寧々さんから
「自分を取り戻すことが大事。人は自分の意志でしか自由になれない」
と聞きました。
たしかに、日本の学生って主語がありません。
センター試験の国語で100点しか取れなかった高校生の私もそうでした。
日本の受験の弊害は、自分に向き合うチャンスを奪ってしまうことだと気づきました。
結果「大学で何をやりたかったのか」と立ち止まる学生は多いです。
「大学の授業ってつまらない」と大学の文句を言いながら、あっという間に四年間が終わってしまいます。
教員になって、学生から「先生、GMARCH行った方がいいですか?」とよく言われます。
親が言っていたとか、友達も受けるからという理由で、受験校を選ぶ学生がほとんど。
周りのせいにぜず、自分のやりたいことに目を向ける教育が、ほとんどなされていません。
日本に必要な教育とは、英語よりも、ITよりも、根っこにアントレ教育なのではと思いました。
むしろ、学生だけじゃなくて、教員自身にもアントレは必要です。
教員が「あなたはどんな教育をしたい?」って問われて、何人が答えられるでしょうか。
HeroMakersは教員向けアントレ研修でした。
2年かけて「自分は何がしたいのか」を考えて、留学したいと気づきました。
こうやって振り返ると、自分の疑問はそのままにせずに、
解決するための場所を探し続けることが大事なんだなと思います。
関東への憧れから、埼玉大を選び、
授業への焦りから、NPOで活動し、
教育への疑問から、HeroMakersへ参加し、
気づけば、コロンビア教育大学院に合格していました。
4.大学院に行ってやりたいこと
大学院受験のエッセーを書くときに、以下の問いを考えたことがあります。
2.幸せにしたい人は誰?
3.その人(幸せにしたい人)にとっての価値は何?
4.学校にとっての成果は何?
5.私の計画は何?
✓学校の目的
一般的に、学校の目的とは何かというと、「学力向上」「よい大学に入れること」が挙げられます。
しかし、これは間違いです。
学校は、子どものためにあります。
学力向上は、目的でも目標でもありません。
手段です。
子どもが自信をもって、堂々と生きていくための道具です。
時に学校では、学力向上が目的視されていることがあります。
その結果、ひずみは、いじめや非行などの問題として表れます。
「学力を上げねば」という考えを一旦捨てなければいけません。
学力を上げるための努力以上に、時間と労力を割くべきポイントがあるからです。
✓成果
成果とは、外部の変化です。
時間がかかります。
「私は〇〇大学に△△人の生徒を合格させた」と言う教員がいますが、これも間違いです。
本当の成果は、その生徒がその大学に入って、大人になって、何をしたかで測られます。
成果を直接測定することは難しいので、代わりの指標を考えなければいけません。
そのために、私はブログを使っています。
私が行った指導の効果があれば、彼らの様子が私のブログに残ります。
とはいえ、ケーススタディーの一つに過ぎません。
私には「日本で公立高校の先生」をやっていると、学力向上を一旦おいて、教育の目的を考える時間がありませんでした。
自分の実践や、日本の教育の成果を測るすべもありません。
だから海外進学が必要でした。
TCで、たくさんの教育者やパイオニアに出会い、自分なりのアプローチを探ります。
「どんな教育がしたいの?」を自問自答する一年にします。
このブログが、教育を見直すきっかけになれば嬉しいです。
質問などありましたら、コメント欄か、「お問い合わせ」よりお願いします。
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コメント
こんばんは。私は大学生活の中で海外留学したいと思っています。このコロナ渦で今留学することはなかなか難しいですが、このブログを読んで自分がやれることを探せるようになりました!状況がよくなって海外に行けるようになることが待ち遠しいです。
あんずさん
コメント、嬉しいです!!
コロナ禍でも、留学に行っている人はたくさんいますし、こういう状況だからこそチャンスなのだと思います。
私も、去年「本当に行けるのか」と不安に思いながら準備をしました。
コロンビア大学は、夏はオンラインで、秋は対面授業ということで、何とかキャンパスライフが送れそうです。
あんずさんも、できることから準備を初めて、海外進学を実現してほしいです。応援しています!